漱石先生の研究

若い頃、自分は教養がありませんでした。
だから、薄っぺらな自分を守るためのよろいが欲しかったんです。
自分の考えのもとになる「BACKBONE 背骨」がなかったんです。

アクセサリーとしての漱石先生

だから、
アクセサリーとして難しい本を常に持ちました
それも、題名が見えないようにして。

そこで出会ったのが、漱石先生の小説です。
ぶ厚い小説は、読みにくいし重いので、できるだけ軽くて有名でないものを携行。

「夢十夜」だったかな。
これは小説ではなく、エッセイです。
でも、なかなかよくできていて、引き込まれていきました。
これが自分の「漱石研究」の始まりです。

教育者としての漱石先生

漱石先生は、自分にとっては文豪ではなく、教育者として尊敬できる人です。

漱石の弟子には、優秀な人が多く、友人もまた有名人ばかり。

◎森田草平・・・小説家
◎小宮豊隆・・・ドイツ文学者「漱石神社の神主」
◎松根東洋城・・俳人
◎寺田寅彦・・・物理学者・随筆家
◎阿部能成・・・哲学者・教育家
◎阿部次郎・・・哲学者・作家
林原耕三・・・・英文学者・俳人
◎内田百閒・・・小説家・随筆家
◎野上豊一郎・・英文学者・能楽研究者
野上彌生子・・・小説家
◎赤木桁平・・・評論家・政治家
芥川龍之介・・・小説家
◎鈴木三重吉・・小説家・児童文学者
岩波茂雄・・・・岩波書店創業者
松岡譲・・・・・小説家
久米正雄・・・・小説家
高浜虚子・・・・俳人・小説家
津田清風・・・・画家・書家・随筆家
中勘助・・・・・小説家・詩人
橋口五葉・・・・装幀作家

◎印は、十弟子。
中には、私生活でとんでもないことをしでかす輩もいましたが、先生はいつも弟子たちの味方でした。

松岡譲は、晩年の木曜会メンバーでしたが、後に長女の筆子さんと結婚しています。

松岡洋子マックレインさんは、漱石先生の孫。
洋子さんの妹、茉莉子さんは、作家の半藤一利の奥さんです。
ちなみに、コラムニストの夏目房之介は、漱石先生の孫です。

家族の視点で語る漱石先生

ただ、文章がうまく書けるだけでは、こんなに多くの才能のある人たちが集まるはずがありません。
教育者としても、温かく、厳しくかつ真摯に弟子たちに向かっていたということは想像に難くないと言えます。
当時、武者小路実篤や和辻哲郎などにも、あたたかい手紙を送っています。

自分も漱石先生のようになりたいと思い、がんばっているつもりですが、到底及びません。
先生の真似をして、ジャムをなめたり、スープのことを「ソップ」といったり、ひげを生やしたりしていました。
コーヒーよりも紅茶を飲んでいたのも先生の影響です。

子どもも娘5人、息子2人と、漱石先生と一緒です。
子をひとり亡くしたのも、同じです。
考えてみると、なくなった子が一番愛おしく思えます。

「彼岸過迄」のなかで、最愛の子が亡くなってしまったシーンがありますが、漱石先生は後に、そのことについて
「よい供養になった。」
「考えてみると、亡くなった子が一番かわいく思える。」
というようなことを言っています。

漱石先生の言葉に同感です。

漱石先生の全てを知りたかったので、先生の作品に関する書籍をはじめ、家族や弟子などの書いた本も読みました。
読めば読むほど、偉大さを感じるようになってきました。

漱石先生の所に来客が頻繁にあると、仕事や趣味の書画に割く時間が無くなってしまうということで、鈴木三重吉の提案で、木曜日午後3時以降に相手をしましょうという趣旨で、「木曜会」なるものが誕生しました。
そうそうたるメンバーで、さぞかし面白い議論がたたかわされたと思います。

津田清風の描いた「漱石と十弟子」はその様子を、絵にしたものです。

自分が漱石先生に勝るところと言えば、「身体が強い」「病気をしない」「胃腸が強い」くらいのものです。
最近は、漱石先生の足元にも及ばない事を自覚して、真似事はよしました。

それでも、将来は「漱石先生の再来」と言われるような小説を書きたいと思っているのです。
小説も書き、童話も書き、絵本も作りたい。
版画も、陶芸も。

ものすごく欲張りなところは、漱石先生をこえているかもしれません。
食いしん坊のところは、いい勝負でしょう。
でも病気にならないようにうまくガス抜きをしながらすすめたいと思います。

漱石先生に関する本を最初に買ったのは、神田の古本屋で、浪人している頃でした。
古本なので、安いのかと思ったら結構しました。

「猫の墓」夏目伸六
「父の法要」夏目伸六

の2冊でした。

夏目伸六は、漱石先生の次男です。
長男は純一。バイオリニストです。
「猫の墓」は、のちに文庫化されました。

漱石先生を研究する【ライフワークとして】

それから、漱石研究本を読みあさり、買い集めて40年。
途中は、子育てに忙しく、読まなくなった時期もありましたが、少しずつ増えています。
もちろん、漱石先生の作品も読みます。

漱石研究年表で、何歳の時にどこに住み、家族が何人で、どんな人と付き合いがあったかが分かります。
自分は漱石先生がなくなった年齢を越えてしまったので、実際の年より25歳(四半世紀)差し引いた感覚で、比較したりします。

研究集成は、これまでに漱石研究で出ている論文や著名人のコメントなどを網羅しています。

一番面白いのは家族が書いた漱石先生についての文章です。
弟子のものは、美化され過ぎてしまっていて、どうも客観性に乏しい気がします。
その点、妻や子どもたちから見た漱石像は、事実に相当近いと思います。

それらの逸話によると、やはり漱石先生も、人間だったんだなと思います。
どんなに立派な先生でも、自分の子が相手だと、平衡感覚を失いますからね。
感情的にもなってしまいがちです。

これからも、漱石先生とはずっとお付き合いします。

これが私のライフワーク「漱石先生に学ぶ」です。

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