わが息子へ【12年ぶりの手紙】

息子へ

お前とはずいぶん遊んだけど、いつもわたしに遠慮していたね。
わがままばかり言うんで、時には頭にミカンを皮ごと叩きつけたこともあった。

スーパーのおもちゃ売り場でもお前は、必ずミニカーを欲しがった。
もちろん余裕のある時には、行くたびに買ったけど。
だからミニカーが何十台もあったね。
あのミニカーはどこにあるんだろう。

確かおもちゃを片さないから、全部しまって遊べないようにしたんじゃなかったかな。

一度くりくりの坊主頭にしたことがあったね。
すごくよく似合っていた。
住宅の壁にマジックでいたずら書きをしたに。
楽しかったね。

お前が小学校2年生くらいの頃、確か7月かな。
家でペンキ塗りの手伝いをやってもらったね。

頑張ったから手や足にペンキが結構ついちゃった。
一応風呂に入ったけど、次の日プールに入れてもらえなかったらしい。
暑い日なのに、ペンキが手足に残っているから、入らせてもらえなかった。
その担任の先生とは、何年後かに一緒の学校で仕事をしたよ。

お堅い人だった。
融通が利かないというかゆるみがないというか、、、。
学校でもお母さんのようにふるまっていたよ。
ペンキ事件のことを知っていたから、話をするのも嫌だったね。


ある雨の日にはミニカーを買わなかったからといって店の中で大声で泣きだした。
そのまま何も買わずに帰ったよ。
みんなびしょぬれだった。

ミュータントタートルズが流行って、おもちゃもずいぶん集めたね。
車が変型して悪者になったりする。
タートルズたちが乗っていたバスも買ったね。

ミニ四駆もよく遊んだ。
一緒に作って公園ではしらせたりコースを買って競争したりした。
細かいパーツを買っては改造して楽しんだな。

小さい時に一度命にかかわるようなけがをしたね。
妻の実家に帰っているとき、きっと正月だね。
私は留守番。

電話がかかってきて、救急車で運ばれたとの連絡。
追いかけっこをしていて、ガラスに突っ込んだらしい。
広い家ではよくあるよね。
幸い頭を切っただけだったので、ホッとした。
いろいろやってくれるよな。

妻と娘が実家に帰るときに、一度だけ父子で家に残ったことがあった。
二人きりだから何となく寂しい何日かを過ごした。

娘と妻が帰ってきて、しばらくして、家の中に泥棒が入ったんじゃないかという事件があったね。
妻の下着(ブラ)が何枚かなくなっていた。
それも新し目のやつばかり狙われたよ。

警察に届けようと思ったけど、もう少し探してみることにした。

結局ブラはお前の引き出しから出てきたね。
寂しかったから母ちゃんのおっぱいが恋しかったんだ。
お前も頑張っていたんだね。
でも家じゅうで大笑いをしたよ。
まだ小学校に上がる前だね。

小学校に上がってから、友達をたまに連れてきた。
その友達の足が臭いのなんのって、、、。
すごかったよね。

その友達と会話しているのを小耳にはさんだんだ。
お前はその友達にこう質問していた。

「ねえ。○○くん。パイオ好き?」

はじめは何のことだか分らなかったけど、、、。
パイオとはおっぱいのことだったようです。
お前もおっぱい星人だったんだね。

お前が小学校高学年の時、陸上の大会で会ったね。
選手になれなかったから、ユニフォームもなかった。
みんなが入場行進しているときに、一人で応援席にいた。

目が合うとばつが悪そうにしていたね。
別に恥ずかしいことじゃないけど、気にしていたのかな。
運動がそれほど得意じゃなくても、勉強ができなくても愛していたよ。

存在そのものに価値があったからね。

お前はミニバスを習っていてがんばっていたね。
でも、背が低いのを気にしていた。
170cmもなかったからね。
男子としては小さい方かな。
高校までバスケやって友だちもたくさんできた。
いまも年に一度来てくれるのだろうか、、、。

お前が高校生になり、彼女を連れてきた。
予想通り、ふっくらしていたね。
ずいぶん仲がよさそうで、うれしかったよ。

生きていたらもうすぐ30歳。
生きていたら子どもも3人くらいいたはずだね。
奥さんになるはずだった彼女もお前の後を追ったよ。
三日後に亡くなった。
お前と同じように高い所から身を投げて、、、。

お前が長男だったから、一番かわいかった。
でも男同士だからべたべたはしない。
悩みを話したりする年齢でもなかった。

お前がが亡くなる何日か前、お前の勤め先から招待の連絡があった。

働いている姿を妻は見ようって言ったけど、私は断った。
結局どちらも行かなかった。

その時に、言っていれば人生は変わったかもしれないね。
謝っても、もう元には戻らないけれども、、すまなかった。

もう少し時間を割いてお前のために何かしてやるべきだったよ。
招待を受けて、あの時に行っていれば、、、。
自分の中でも少しは気が楽になったのにと思う。

わが息子へ【12年ぶりの手紙】” に対して2件のコメントがあります。

  1. T28 より:

    私も長男ですが、一番かわいいものなのですね!
    お互いに歳を重ね、酒を交わしますが、親父とは物心ついてから会話なかたったですね。

    1. match より:

      私も親父と酒を飲んだことがないし、息子とも飲んだことがありません。
      今考えると、自分がなかなか大人になりきれていなかったからかだと思います。
      やっぱり上の子が一番かわいいものですよ。
      特に男の子は、、、。

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