夢中で読んだ九冊の本

時間を忘れて夢中になる本に巡り合うことは、なかなかありません。
たいていの本は、途中で休憩してもいい。
ところが、ごくまれに途中でやめたくなくなるものに出くわすことがあって、まさに天の采配。
僥倖というものです。
そんな本を集めました。

読書は、ただの暇つぶしですが、読書の喜びを知る者には、至福の時です。
ちょうど自分の感性にあった、その時の状況や心の様にぴったり合った本に出会えたら、いいです。
ここでは、小説・アウトドア・クルマの本は除外しました。

日本の本

近代日本食文化年表
小菅桂子 雄山閣

この本は、安政から平成までの食文化について調べた年表です。
佃煮を誰が初めて売り出したのか。
とか、木村屋があんパンを発売したことなどが分かるようになっています。
三ツ矢サイダーの始まりや、サッカリンの使用のはじめても年表に書かれていて、とてもおもしろいです。
サッカリンといえば、60歳以上の人には、わかるでしょうが、砂糖の代用の甘味料です。
アイスに入っていて、何か違和感のする甘味でした。
懐かしいけれども、きっと毒だったんでしょうね。
「インド人もびっくり」のカレーの記事なども載っています。

この本の初めに中川嘉兵衛という人物が何度も出てきました
外国に習い、氷の需要を見込んだ嘉兵衛は、4回5回と失敗を重ね、今のお金で4億もの借金を抱えますが、めげません。
ついには製氷の仕事が軌道に乗り、他にもビスケットなどの製造販売も手掛けます。
また、新聞に公告を出したりとバイタリティーの塊です。
その人について、調べてみようと思いました。
彼がつくった横浜氷会社は現在のニチレイだそうです。
日本で初めての牛鍋屋「中川屋」を開業したのも嘉兵衛でした。
明治の人の商魂は、たくましいですね。

虫食む人々の暮らし
野中健一 NHKブックス

筆者は幼少のころから、虫捕り(ヘボと呼ばれている黒スズメバチの幼虫)名人の祖父に教わって、昆虫食の楽しさを体感してきた人です。
日本でも海外でも昆虫食は昔から行われていて、最近では、捨たれてきてしまいましたが、イナゴや、カミキリムシの幼虫、カイコ、ハチなどは、重要なたんぱく源として重宝されてきたのでした。
この筆者が、昆虫食を求めて海外へ出かける話です。
世界の人口が増え、食べるものに困る時代がやがてやってきます。
超金持ちは別として、我々庶民は、必然的に昆虫をは食べることになるかもしれません。
形は違っても、肉のようになった昆虫のたんぱく質を食べるんでしょう。

昆虫食と自然とのかかわりをわれわれに教えてくれる貴重な本です。

欲望としての他者救済
金 泰明 NHKブックス

著者は、他者救済を考え実行しようとしています。
しかし、他者救済を人に強制しようとも思っていません。
人に頼まれたからでも、命令されたからでもなく、気が付いたら困っている人に手を差し伸べている。
そんな自分でありたいといいます。
自分も、もっと勉強しなければいけないと、触発された一冊でした。

翻訳本

アメリカがまだ貧しかったころ
ジャック・ラーキン 青土社

今でこそ、経済的にも軍事的にも世界一の国になりあがったアメリカですが、つい200年前は、貧しい国家でした。
筆者は日常生活に焦点を絞り、開拓時代の人々の暮らしの変遷を綴っています。
「アメリカの生活」が、だんだんと豊かで、健康的で、便利になっていく歴史。
そこで見られる「得たもの」と「失ったもの」の感じは、現在日本で私たちが感じる感覚とシンクロするのではないかと思いました。
古き良きアメリカの飾らぬ生活が書かれています。

さらば食料廃棄
S.クロイツベルガー 春秋社

副題は「捨てない挑戦」とあります。

世界では、飢餓に苦しんでいる人たちが何千万人もいるというのに、我々先進国の人間は、「知っていながら知らないふりをして」毎日何万トンものまだ食べられる食物を廃棄しています。
そんな我々に、この先どうすればいいかについて一石を投じる本です。
豊かになればなるほど、物を大切にして、無駄を省くのが、進化した人類のやることだと感じました。
今のままでは何万年前の人間と同じか、それ以下の行為を、平然と行っているとしか思えません。

寄生虫なき病
M.V.マノフ 文芸春秋

公衆衛生の向上に寄り、寄生虫の感染は激減しました。
しかし、喘息、アレルギー、花粉症など、様々な現代病が我々を襲っている事に気づいた筆者は、自ら寄生虫の卵を飲み、寄生虫を体の中に飼育して、共存する実験を行います。

そういえば、50年前は喘息といえばごく限られた大気汚染された地域の病気でしたし、アトピーやら花粉症もききませんでした。
自分も、ギョウチュウと共存していたためなのか、健康でした。

男色の日本史
G.P.リューブ 作品社

明治になって、西欧の文化やキリスト教的な道徳観がよしとされるにつれて、日本独自の「男色文化」が、影をひそめることとなりました。
それ以前、僧侶は稚児を、武将は小姓を、江戸の男は、役者・女形・若衆たちとの性的快楽に酔っていたらしいです。
彼らは、男色一本ではなく、両刀使いでもありました。

おわりに

時間と財力があれば、もっともっと本を買って読みたいと思います。
図書館で借りて読む方法もありますが、書き込みも出来ないし、また読みたいときに探せません。
全部読み返すのが結構手間がかかります。
もう一冊紹介したかった本がありましたが、読む時間が足りませんでした。

この本です。
タイトルだけで惹かれるでしょう?


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